ニューヨークのロフト・ジャズの流れを汲む地下シーンから登場し、90年代初頭の混沌としたUSジャズ・シーンで発表したグラマヴィジョン時代の3部作(「It's a Jungle in Here」(93)「Friday Afternoon in the Universe」(95)「Shack-man」(96))はコアなジャズファンよりも、よりジャンルレスで刺激的な音を求める若いリスナーに歓迎された。スタイルを確立し、98年にはジャズ・レーベルの名門、ブルーノートと契約し「combustication」「THE DROPPER」「Uninvisible」と名盤を量産し、ライヴサーキットの中で、ジャム・バンド・ブームの先駆け的存在としてその地位を不動のものにした。
しかしこれだけの実績を持ちながら、MMWが今なお音楽シーンで「逸(そ)れ者」扱いされる理由は、常に未開の表現方法を追求し、自由な音楽表現の「良き聴き手」だった筈のジャズやジャムのリスナーの領域からも逸脱する発展を続けているからに他ならない。
その象徴と言えるのが昨年【Radiolarians】プロジェクトだ。リリースタイミングや時にはその内容にまで関与するメジャー・レーベル管理下での創作活動から離れ、インディペンデントのスタンスから、シリアスなクリエイター集団にとっては意外ともいえる子供向けの曲集「Let's Go Everywhere」、鬼才ジョン・ゾーンとの共作「Zaebos: The Book of Angels Vol. 11」などを経て、2009年1年間で3枚+α(ボックスセット)をリリースし続けるという【Radiolarians】連作をスタートする。
通常の作曲〜録音〜ライヴ演奏という流れを逆流させ、楽曲ラフスケッチがツアー中に、徐々に一つ一つの楽曲として形作られ最終的にレコーディン グ作品に仕上がる、この作業により「Radiolarians I,II,II」の3部作が完成。さらにDJ Logic、DJ Oliveといった盟友によるリミックスなどのオプションディスクも封入した「Radiolarians」BOXなど、その無尽蔵ともいえる創造性をまざまざと発揮した。